IT関連の人材不足に悩む企業へエンジニアを提供するSES企業。人的リソース不足による機会損失の防止や、人件費削減などに役立ちます。ただし、ベンダーの選定には知識を要します。ここでは、SES企業を利用する際に押さえておきたい選定ポイントと、課題別に見る向き不向きの傾向、利用時の注意点を解説します。

SES企業を選ぶときのポイント

SES企業を選ぶときのポイント

 

SES企業を選ぶ際に留意しておきたいポイントは次のことです。

対応業務・得意分野は何か

SES企業(SES会社)が提供する技術・ノウハウの範囲は各社で異なります。サービス選定では、まず自社に必要な技術・ノウハウに対応しているかをチェックしましょう。SES企業が対応する業務には、次のようなものがあげられます。

 

  • システム開発(汎用系、通信系、オープン系など)
  • プログラミング(Web、スマホアプリ、ゲームなど)
  • PM・PMO(プロジェクト管理、品質管理など)
  • ITインフラ構築(サーバー構築、ネットワーク構築など)
  • システム保守(サーバー保守、セキュリティ対策、障害対応など)
  • 業務サポート(ヘルプデスク、資料作成など)
  • Web制作・運用(Webデザイン、ECサイト運用など)

 

また、各社の得意分野も確認しましょう。「ミドルウェア開発が得意」「金融業界に強い」などの特徴をチェックして、自社のニーズに適するSES企業を絞り込むとよいでしょう。

自社の地域に対応しているか

SES企業の選定では、サービス提供地域を必ずチェックしましょう。とくに大都市圏から離れた地域の場合、サービスを受けられない可能性が出てくるため、しっかり確認してください。自社の地域でサービスを提供する事業者が見つからない場合は、エンジニアのフルリモートが可能なSES企業を探すのも1つの方法です。

人材数にゆとりはあるか

SES企業が抱えている人材数も選定ポイントの一つです。なぜなら、エンジニア数が多いほど、安定的に人材を確保しやすい傾向があるためです。SES企業が提供するエンジニアは、ベンダーが直接雇用する社員のほか、パートナー企業の人材やフリーランスなど様々です。基本的には人材の調達先が多いSES企業ほど、エンジニア共有の安定性が高いことが想定されます。

 

ただし、保有スキルや対応できるプログラミング言語などは各社で異なるため、自社の要件とのマッチングを合わせて確認する必要があります。

情報セキュリティに取り組んでいるか

SES企業のサービスの利用中は、社外のエンジニアが自社の情報を扱うことになります。技術や経営に関する情報が社外に漏れないように、SES企業の選定では情報セキュリティに関するベンダーの取り組みを必ずチェックしましょう。

 

SES企業によっては、自社のWebサイトに情報セキュリティ基本方針のページを設けています。こうした情報源を活用して、安心して利用できるSES企業か否かを判断しましょう。Webで情報が見つからない場合は、ベンダーに問い合わせて、どのような情報セキュリティ対策を実施しているか確認しましょう。

課題・ニーズ別に見たSES企業の向き・不向きの傾向

自社が抱える課題や要望によって、利用に適するSES企業のタイプが変わります。次の表を参考にして、どのようなSES企業が自社に向くか検討してください。

 

課題・要望

向き・不向きの傾向

自社とエンジニアとのマッチングに不安がある / スキルだけでなくパーソナリティも考慮したい

・抱える課題やプロジェクトの方針などを細やかにヒアリングしてエンジニアを選定しているSES企業が望ましい。複数社に打診して比較するのも一案

大規模プロジェクトにSESを利用したい / 大人数のエンジニアを派遣してほしい

・パートナー企業や提携フリーランスが多いSES企業は大人数をアサインしたい場合に対応しやすい

・チーム体制でのエンジニア提供の実績が豊富なSES企業を検討するとよい

トラブルが発生するのが不安

・問題発生時やリスクに対してSES企業側でフォロー体制を組んでいるところが望ましい

SES企業の利用時に注意すべき点

SES企業の利用時に注意すべき点

 

SES企業を利用する際は、以下の点に注意しましょう。

エンジニアに求めるスキル・要件を明確にする

SES企業を利用する際に注意したいのが、自社のニーズとSESエンジニアとのミスマッチです。SES契約では、事前のヒアリングをもとにベンダーがエンジニアを選出します。クライアント企業による人材選考はできません。このため、事前準備が不十分だと自社が求める人材とのミスマッチが起こり、現場の混乱を招く可能性があります。

 

適切な人材を確保するには、事前にエンジニアの要件を明確にしておくことが必須です。プロジェクトで扱うプログラミング言語などが決まっている場合は、漏れなく伝えておきましょう。

 

なお、SESエンジニアのミスマッチが生じた際は、人材の交代をベンダーに要求できます。ただし、エンジニアの入れ替えはできても、その間のタイムロスは取り戻せません。人材要件を設定するのが難しい場合は、事前にSES企業に相談した上ですり合わせるようにしましょう。

現場への説明を徹底する

SES企業のサービスを利用する際は、業務現場への事前説明を必ず行いましょう。プロジェクトに参画するエンジニアの立場や準委任契約についての説明を行い、現場の理解を得た上でサービス利用を進めてください。事前説明が不十分なままサービスを利用すると、意図せず違法行為となってしまう可能性があるので要注意です。

 

SES契約(準委任契約)では、SES企業がエンジニアへの指揮命令権を持ちます。クライアント企業の社員がエンジニアに直接指示を出すと準委任を装った偽装請負が疑われるなど、法律に抵触してしまう可能性が生じます。

 

SESエンジニアが働く現場には、作業者のほかに管理責任者が配置されます。エンジニアに指示を出したい場合は、管理責任者に相談するように現場に周知しておきましょう。

SES企業の活用に動き出そう

SES企業を有効活用するには、まず自社が必要とするエンジニアを安定的に供給してくれるベンダーを探し出す必要があります。また、サービス利用フェーズでは、エンジニアに求める要素を明確化してベンダーに伝えることが肝要です。準委任契約について業務現場への説明を行うことも必須です。以上を踏まえて、SES企業を有効活用しましょう。